
この記事の要約です♫
リリックとは、ラップにおける感情と物語を乗せた言葉の芸術です。この記事では、STAND WAVEの可児波起が、初心者にもわかりやすくリリックの書き方を解説。テーマ設定からキーワード抽出、韻の踏み方、構成技法、比喩の使い方まで、実体験とプロの視点で紹介しています。言葉が心に届くリリックを作るための具体的なステップや、よくある質問への回答も網羅。技術だけでなく「自分の声を表現する大切さ」にも焦点を当て、ラップリリックを書くことの本質と楽しさを伝えています。
「どうしてもカッコいいラップのリリックが書けない」
「韻は踏めるけど、なぜか心に響かない」
そんな悩みを抱えていませんか?
こんにちは。STAND WAVEの可児波起(カニナミキ)です。
僕は25年以上、ラップと向き合いながら音楽を続けてきました。
DAW「Cubase」を使って作詞作曲を手がけ、メジャーデビューも経験し、今では多くのアーティストに楽曲提供をしています。
でも、最初からうまくリリックを書けたわけではありません。
言葉に詰まり、自分の感情すら表現しきれない日々もありました。
それでも、続けてきたからこそ気づけた「心を動かす言葉の作り方」があります。
この記事では、初心者でも迷わずラップリリックを書けるようになるためのステップを、僕自身の経験や、これまで関わってきたアーティストたちとの実例を交えながら、丁寧に解説していきます。
韻の踏み方や構成のテクニックはもちろん、
**「何を伝えたいか」**という本質にまで踏み込んだ内容になっています。
この記事を読めば、
「伝わるラップ」
「あなたの物語が響くリリック」
が、きっと書けるようになります。
一緒に、リリックを書く楽しさを見つけていきましょう。
第一部:リリックって何?ラップにおける言葉の意味と役割

リリックとは「感情」と「物語」の塊
リリック(Lyric)とは、音楽における「歌詞」のことです。でも、ラップにおけるリリックは、ただの歌詞ではありません。
心の中にある想い、日常のストーリー、社会へのメッセージ、感情の断片――そういったものすべてを、リズムと韻でパッケージ化した言葉のアートです。
僕が初めて自分のリリックを書いたのは中学生の頃。ノートの端に、友達とのケンカのこと、好きだった子のこと、将来の夢をゴチャゴチャに書きなぐったのを覚えています。
最初は何がリリックなのかすらわからなかったけど、感情のままに言葉を吐き出す行為こそが、リリックの原点だと今では思います。
ラップにおけるリリックの役割
ラップの中で、リリックが持つ役割は大きく3つあります。
1. 自分の「声」を社会に届ける
ラップは、元々は黒人の若者たちが社会への不満や苦しみ、日々のリアルを叫んだ文化です。
たとえば、Public Enemyの「Fight the Power」や、Tupacの「Changes」のように、抑圧に立ち向かうメッセージは、リリックによって全世界へ届きました。
僕自身も、東日本大震災のあと、避難所を回りながら「幸せの歌」というリリックを作り、皆で一緒に歌いました。
あの時、言葉の力で人の涙が笑顔に変わる瞬間を見て、リリックの意味を改めて実感しました。
2. ストーリーテリングのツールとしてのリリック
ラップは、短編小説にも似ています。
3分ほどの時間の中で、登場人物、舞台、感情の起伏をすべて描き切るのが、うまいラッパーのリリックの力です。
たとえば、KREVAさんの「音色」は、日常の描写から一気に感情を展開し、聴き手を引き込むストーリーテリングの名作だと僕は思っています。
3. 技術としての「韻」や「リズム」の土台になる
リリックはただのメッセージだけでなく、音楽的な要素としても重要です。
韻を踏んだり、リズムに乗せたりすることによって、リスナーの耳に残るパンチラインが生まれます。
僕が昔使っていたAKAIの「MPC2000XL」では、リリックのグルーヴを身体に叩き込むように打ち込んでいました。最近ではCubaseなどDAWを使いながら、細かいアクセントも意識して作り込むことができます。
ラップリリックの進化:過去と現在
昔のラップは、ストリートのリアルや社会的な怒りを表現するものが多かったですが、今はもっと自由で多様になっています。
- 愛を語るリリック(RIP SLYME「ラブトレイン」)
- 旅をテーマにしたもの(KICK THE CAN CREW「マルシェ」)
- 自然と共生するメッセージ(STAND WAVE「大樹」「給水塔」など)
僕らSTAND WAVEは「ネイチャーヒップホップ」と呼ばれるジャンルで、「自然と人間」「いのちのリズム」「静かな感情」などをラップで描いてきました。
「リリックは怒りや反骨だけじゃなく、優しさや祈りにもなれる」と信じています。
まとめ:リリックは自分だけの言葉の彫刻
リリックは、自分の「今」を刻む言葉の彫刻です。
誰かの真似をする必要はありません。
あなたが何を見て、何を感じて、何を伝えたいか――そこにしか、あなたのリリックは生まれないんです。
この第一部では「リリックとは何か?」をテーマにお話しましたが、次の第二部では、**実際にリリックを書くときの「ステップ」や「ルール」**について、さらに深く掘り下げていきます。
第二部:初心者でも書けるラップリリックの書き方ステップバイステップ

「書けない」を「書けた!」に変えるリリック作成の基本
リリックを書くときに「何から始めればいいの?」と戸惑う方は多いと思います。
僕も昔は、ノートの前で1時間以上悩んで一行も書けないことがよくありました。
でも、いくつかのステップを踏むことで、「思いつかない」状態から「伝えたいことがあふれてくる」状態へと変わっていけます。
ここでは、初心者でもスムーズにリリックを書き始められる5つのステップを紹介します。
ステップ1:テーマを決める
まずは「何を歌いたいのか?」を決めましょう。
これはとても大事な作業です。
テーマの例:
- 自分の過去(いじめ、夢、葛藤など)
- 社会への想い(環境問題、貧困、戦争)
- 恋愛や友情
- 日常の風景や気持ちの変化
- 自分の信念や哲学
僕の曲「幸せの歌」は、震災を経験した人々の笑顔を思い出しながら書いたものです。
テーマが明確だと、リリックの芯がブレません。
ステップ2:キーワードをメモする
テーマが決まったら、そのテーマにまつわる言葉を箇条書きで出していきます。これは**「言葉の貯金」**です。
例:「夢をあきらめなかった自分」をテーマにした場合
- あの日
- 教室
- ノート
- 消しゴム
- 夕暮れ
- 雨
- 静かな怒り
- 誰にも見せなかった涙
- 希望
- 音楽
ここで出したキーワードは、後でリリックを書くときに「素材」として使えます。
ステップ3:リズムを意識して一行書いてみる
次に、ビートに合わせて言葉を乗せてみる練習です。
最初はシンプルな8ビートのトラックや、ローファイ系のテンポ(80〜100BPM)がおすすめです。
例えば、以下のようなリズムで、短いフレーズを乗せてみましょう。
「雨が降ったあの日に思った」
「夢は誰かに笑われるもんだ」
「でも心の奥でまだ光ってた」
ここで重要なのは、「完璧を求めないこと」。
言葉はラフでOKです。あとから修正できます。
ステップ4:韻を踏む練習をしてみる
ラップならではの技術、それが**韻(ライム)**です。
韻とは、語尾や音をそろえることで、言葉にリズム感や中毒性を生み出すテクニックです。
例:
「あの日のノートに書いた言葉が」
「今では遠く届く音が」
「ことばが」「おとが」で、語尾をそろえています。
日本語ラップでは、「母音(あいうえお)」の一致を大事にすることが多いです。
初心者におすすめの練習法:
- 同じ母音で終わる単語を集めてリストにする
- たとえば「お」:心、孤独、希望、祈ろう、炎、届こう など
DAW「Cubase」を使っている方なら、ラップトラックのテンポに合わせて録音しながら音を聴いて調整することもできます。
ステップ5:構成を考えてリリックを組み立てる
ラップのリリックは、ある程度の構成に沿って組み立てると、伝わりやすくなります。
一般的な構成(例):
- イントロ(導入):状況や感情を提示
- バース(主張):ストーリーや心情を深掘り
- フック(サビ):印象的なキーワードやパンチラインを繰り返す
- アウトロ(まとめ):メッセージの余韻を残す
僕が使っている方法は、「サビ」から先に書いて、そこから逆算してバースを作るスタイルです。
感情のピークを先に作ることで、自然と流れが決まりやすくなるんです。
実践例:「夢をあきらめなかった自分」
ここまでのステップを踏まえて、簡単なリリックを書いてみました。
「笑われてた小さなメロディー」
「誰にも届かずに消えかけてた」
「でもあの日の雨が僕を洗って」
「音に変わって空へ響いた」
このように、テーマ、キーワード、リズム、韻、構成を意識していけば、初心者でもリリックを書き上げることができます。
まとめ:リリックは感情のリズム
リリックは「書きたいことがある」からこそ書けるものです。
スキルや知識も大切ですが、**いちばん大切なのは「あなたの言葉で表現したい感情があるかどうか」**です。
次の第三部では、**「さらに深みのあるリリックにするための技術と発展テクニック」**について、より高度な視点からお話していきます。
第三部:心に刺さるリリックを書くための応用テクニックと作詞の裏側

リリックは「共感」から「感動」へ進化する
ここまでで、リリックの基本的な書き方をマスターしてきました。
でも、さらに一歩踏み込んで「聴いた人の心に残る」「何度も聴きたくなる」リリックを書くためには、もう少しだけコツが必要です。
25年にわたってリリックを書いてきた僕が実感しているのは、テクニックと感情がバランスよく混ざり合ったとき、リスナーの心に深く刺さるということ。
ここでは、そんな“深く刺さるリリック”を書くための応用テクニックをお伝えします。
比喩(メタファー)を使いこなそう
比喩は、リリックに奥行きと余韻を与える最強の武器です。
直接言葉にしなくても、別のものになぞらえて伝えることで、聴く人の想像力を刺激することができます。
例(STAND WAVE「大樹」より):
「悲しみも栄養になるなら 僕の根っこはもう強いだろう」
ここでは「悲しみ=栄養」「自分=大樹の根っこ」という比喩を使っています。
こうすることで、「悲しみを乗り越えた強さ」を、聴く人それぞれが自分の経験に置き換えて感じることができます。
他の例:
- 「涙が落ちる音が、静かな花火みたいだった」
- 「君の笑顔は夜を照らす月明かり」
五感に訴える比喩表現ができると、聴く人の心に情景が浮かびます。
ライム(韻)を複雑にして個性を出そう
初心者の段階では単純な韻(語尾)を使っていましたが、慣れてきたら**「中間韻」「多重韻」「母音一致韻」**なども取り入れてみましょう。
多重韻の例(押韻を2音以上重ねる):
「光のなか、祈りのなか、ひたすら道を選び取った結果」
「なか/なか」「選び取った結果」が多重で響いていて、音楽的な心地よさが生まれます。
中間韻の例(行の途中に韻を仕込む):
「気持ちが沈む午後の街、瞳閉じれば聞こえるMagic」
このように、ラップ全体の**グルーヴ感(流れるような気持ちよさ)**を作ることができます。
僕は昔、AKAIのMPC2000XLに言葉を打ち込んで、どのタイミングで韻を踏むと一番気持ちいいか、何度も繰り返し確認していました。今はCubaseで波形を見ながら、より繊細にタイミングを合わせています。
ストーリー性を持たせる構成術
強く印象に残るリリックには、必ず**「物語性」**があります。
単なる日常や感情を並べるのではなく、聴いた人が「一緒に旅をした気分になる」ような構成を心がけましょう。
物語構成の型:
- 導入(過去の出来事や状況)
- 葛藤(壁や悩み、迷い)
- 転換(気づきや出会い)
- 結末(今の自分、未来への視点)
この流れは、STAND WAVEの楽曲「記憶の中の青い春」でも意識して使っています。
青春の痛みと別れ、そしてそれでも前に進んでいく姿を描くことで、聴き手に「自分にもそんな時があった」と共感してもらえるんです。
本当に言いたいことは一つに絞る
リリックを書くうちに、あれもこれも伝えたくなって、テーマがぼやけてしまうことがあります。
そんなときは、一度「この曲で一番伝えたいことは何か?」に立ち返ってみてください。
僕が書いた「幸せの歌」は、「人の笑顔は誰かの力になる」というたった一つのメッセージを大切にして作りました。
それだけでリリックに芯が生まれ、迷わず書き進められるようになります。
自分の声で読んでみよう(感情を乗せるチェック)
リリックが完成したら、声に出して読んでみることがとても大事です。
感情がこもらない、引っかかる部分がある、リズムがズレる…そういった違和感を見つけるのは、声にしたときがいちばん。
DAWで録音してみて、聴き返してみると客観的な視点も得られます。僕はCubaseのテンポを落として録音した後、1フレーズずつピッチやリズムを微調整しながら、「声の音楽」としてのバランスを取っています。
まとめ:テクニックは感情を伝えるための「橋」
比喩、韻、構成、声の使い方――どれも大事なテクニックです。
でも、忘れてはいけないのは「それらは全部、感情を伝えるための橋にすぎない」ということ。
技術があるからこそ、あなたの想いはより遠くへ、より深く届けられる。
リリックは、心の奥底にある「何か大切なもの」を言葉にする旅です。
次の章では、読者の皆さんからよくいただく質問を「Q&A形式」でまとめ、実践的なヒントをさらに深掘りしていきます。
よくある質問:ラップリリックの書き方に関するQ&A

Q1. リリックって毎日書いたほうがいいんですか?
A. はい、可能であれば“毎日1行でも”書くことをおすすめします。
リリックは筋トレと同じで、書けば書くほど「言葉の筋肉」が育ちます。
最初は1行だけでもOK。感情を言葉にするクセをつけておくと、ふとした日常の中で「これ歌にできるかも!」という感覚が自然と身につきます。
僕自身も、介護職で働いていた頃、休憩中にメモアプリに思いついた言葉を書き溜めていました。
その一つ一つが後の楽曲「優しくありたい」につながりました。
Q2. 書いたリリックに自信がありません。どうしたらいいですか?
A. 「自信がない」はチャンスです。そこにこそ、あなただけのリアルが宿っています。
誰かの真似ではない、自分の言葉を模索する過程は、間違いなくあなたの強みになります。
不完全なリリックにも、**未完成だからこそ出せる“揺らぎ”や“リアルさ”**があります。
僕が「幸せの歌」を初めて披露したときも、不安でいっぱいでした。
でも聴いた人たちから「泣けた」「自分の気持ちみたいだった」と言われて、「不完全でも想いは伝わる」と知りました。
Q3. 日本語ラップに向いている言葉の特徴ってありますか?
A. 母音の響きが豊かで、感情を乗せやすい言葉が向いています。
日本語ラップでは、「母音」での韻踏みが主流です。
たとえば、「あ・い・う・え・お」で終わる単語の組み合わせに意識を向けると、滑らかで耳に残るフレーズが作りやすくなります。
さらに、擬音語や擬態語(ザーザー、ギラギラ、ドキドキ)などの日本語ならではの表現も、音に乗せると独特の味になりますよ。
Q4. リリックとビートの相性が合わないときはどうすれば?
A. ビートに合わせてリリックを微調整するのが正解です。
「歌詞がいいのに、ビートに乗らない」という悩みはよくあります。
そんなときはビートを聴きながら、リリックの語尾や言い回しを少しずつ削ったり、足したりして調整しましょう。
僕はCubaseでトラックを再生しながら、1フレーズずつ録音しては書き直し…を繰り返しています。
言葉が音にハマった瞬間の「ゾクッとする感覚」は、何度味わっても最高です。
Q5. どうしてもテーマが思いつきません。ネタ切れしたときはどうする?
A. 自分の生活・ニュース・人との会話、すべてがネタの宝庫です。
リリックは**「生きてること」そのものから生まれます。**
- 朝起きたときの気分
- バスの車窓から見た風景
- 誰かとの何気ないやり取り
- SNSで見たニュースや社会問題
僕は「給水塔」という楽曲を、ある街で見かけた水タンクを見て思いつきました。
一見なんでもないものも、視点を変えれば“テーマ”になります。
まとめと感想:言葉で生きる。自分をリリックに刻もう

リリックは、ただの「歌詞」じゃない
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。
この記事では、ラップにおける「リリック」の意味、書き方の基本、応用テクニック、さらにはよくある疑問まで、プロの目線から詳しくご紹介してきました。
リリックとは、自分の内面を言葉にして、音に乗せて、誰かの心に届ける“旅”のようなものです。
それは、ひとつの詩であり、ひとつの物語であり、そして何よりもあなた自身の「声」そのものです。
経験が言葉に、言葉が音に、音が誰かの心に
僕が初めてリリックを書いたのは、14歳のとき。
家に帰っても誰にも話せなかったモヤモヤを、ノートに書いてラップにしていました。
その時のリリックは、正直、今見るとめちゃくちゃです(笑)。
でも、そこには確かに「自分が存在していた証」があって、それが今の僕の土台になっています。
STAND WAVEとしてメジャーデビューし、多くのライブや楽曲制作を重ねてきた中で実感しているのは、リリックの力は“完璧さ”じゃなく“真実”に宿るということ。
怒りも、愛も、迷いも、希望も、
全部そのまま、リズムに乗せればいい。
君にしか書けないリリックがある
どんなに上手く韻を踏んでも、どんなに美しい言葉を並べても、
「心」が入っていなければ、ただの音です。
でも逆に言えば、うまくなくても、リズムに乗ってなくても、
“自分の言葉”をちゃんと持っていれば、必ず誰かの心に響きます。
SNSで「バズる」ようなラップもいいけど、僕が伝えたいのは、
あなた自身の人生が“世界でたった一つのリリック”になるということ。
さあ、書いてみよう。音を鳴らそう。
この記事が、あなたの「書けない…」という悩みを少しでもほぐし、
「ちょっと書いてみようかな」という気持ちに変わっていたら嬉しいです。
まずは1行、思いついた言葉をノートやスマホに書いてみてください。
そして、その言葉が、いつか曲になって、誰かの心を動かす――
そんな未来を、僕は心から応援しています。
リリックは、命のように揺れながら、
音の中で、あなたの声を輝かせてくれる。
君の言葉は、音になる準備ができている。
──可児波起(STAND WAVE)